【第13話】
吉村が口にした単語の意味は、優子も理解していた。
男の性器を口に含み、それを愛撫することで射精へと導いていく。
(でも、出来るの? 本当にこれを口に入れないといけないの?)
見下ろした優子の視線が、勃起した男性器に注がれる。
彼女の処女を奪い、さらにはお尻の穴まで貫いた、凛々しくも猛々しい肉棒をじっと見据えるように。
もう、初心な女の子ではないのだ。
顔を覆い、赤面するような仕草だけは見せたくはない。
「さっき、おしっこをしたばかりだけど優子なら平気だよね」
「う、うん……平気……」
わたしはまだ、この人に試されているのだ。
隼人君の恋人と比べられているのだ。
本音を語れば、唇に触れるのもためらわれる。
ましてやソレを口の中に含み入れ、舌をあてがうなどと……
(愛する隼人君のものだから……全然平気……だよね)
けれども優子は拒まない。
吉村が平然と口にしたならば、正直な顔の筋肉を引きつらせながらも、こくんとうなずいてみせるしかない。
「しゃがみなよ」
「こ、こうかな」
背中を個室の壁に添わせながら、優子は腰を屈ませた。
さっきまで見下ろしていたはずの肉棒が、彼女の目前に迫っていた。
「ヒッ!」
漏らしてはならない声を、喉が吐き出していた。
目にするのはこれが初めてではない。
それなのに、女の子の本能がどうしようもない恐れに震えた。
「出来ないの? 麗華だったら……」
「します。口に入れるから」
『きっと悦んでしゃぶってくれる』
つまりはそう言いたかったのだろう。
ならばわたしも。わたしの方があの人よりも積極的に、あの人よりも上手に……
「ふぁむ、むぅっ……!」
優子は閉ざそうとする唇をこじ開いた。
透明な汁を滴らせる肉棒の切っ先を口に咥えさせると、喉の奥にまで呑み込ませていく。
強張りを隠せない唇の肌が、パンパンに膨らんだ亀頭を、さらには鉄のように硬化させたカリ首の半ばまでを包んだ。
「ぐぅっ、あぐむぅっ!」
胃液が込み上げて来るのを感じた。
生まれて初めて口に含んだ異様な物体に、苦しい目眩を覚え、どうしようもない吐き気が優子に襲いかかる。
「どうかな、優子。僕のオチ〇チンを咥えた感想は?」
頭上から声が降りかかる。
フェラチオという行為を命じ、それによって口を塞がれた少女に対して、無茶な要求を平然と投げかける。
「むぁ、あむぅ……んぐぅ……」
優子は喉を鳴らした。
顔をコクンコクンと小さくうなずかせながら、上目遣いに見上げた。
「ふーん、泣いてるの? 目から涙がこぼれそうたよ」
いつもどんな時でも表情を変えない。
そんな吉村の顔に、わずかながらの笑みが浮かんでいた。
それが心からの悦びのものなのか。
はたまた、寄り添おうとする少女を弄びたいがために……
(どちらでも構わない。隼人君が満足してくれるなら、わたしは彼のために……)
ジュル、ジュニュ……
はしたなく唇が鳴った。
唾液に浸された舌の肉が、ぎこちなく肉棒の肌に絡みついていた。
「むふぁ、むうっ……」
脳内の隅っこには、エッチな残像の切れ端が映し出される。
両親の目を盗み、深夜の自室でパソコンの画面をこっそりと覗き見したネット動画の記憶が不鮮明に呼び起こされる。
「オチ〇チンをただしゃぶるだけじゃなくて、抜き差ししてしごいてみなよ」
「はむぁ、じゅる……んむぅ……」
吉村のアドバイスに、優子は『はい』と返事をした。
太くて長い肉塊を頬張りながら、言葉にはならない声を振り絞ってみせた。
「むちゅぅ、じゅぶぅ……レロ、レロ……ぐぅっ……」
頭を後ろに反らせては、前へと押し出した。
露わにされた男の下半身が、少し遠くなっては間近へと迫りくる。
それをひたすら繰り返すのだ。何度も何度も。
輪っかにさせた唇の中を通すようにさせ、肉棒を行き来させる。
口内の粘膜を怒張した肉の切っ先に削らせながら、それでも舌を這わせていく。
生まれて初めて経験もないままに、恋しい人の性器を悦ばせようとして。
「もっと絞めつけてよ。もっと喉の奥まで。優子、それじゃ全然終わらないよ」