第20話
禁欲ペニスに待ち受けるモノ
『オナニー禁止、一週間!』
智花によって、そう命じられた。
もちろん、ターゲットは治彦のペニスである。
精力漲る若い肉体を、悶々とした禁欲地獄にさらして、治彦は七日間の時を過ごした。
そして禁欲の喪が明けたその夜、治彦は呼び出されていた。
「こっち、こっち……」
智花が手を振っていた。
その傍らに立つ真由美が、肩口のあたりにまで手を上げて、ぎこちない笑みを送っている。
月明りと、非常灯の明かりにのみ照らされたなじみの門構え。
二年と半年分通い続けたその校門へと、治彦は小走りで駆け寄った。
「十分の遅刻よ」
「十分くらいなんだよ」
「か弱い女の子二人が、深夜の校門前に立っていたんだよ。もしかしたら、怖~い狼たちの襲われたかも」
智花はそう言うなり、真由美の方へと顔を向けた。
『ね、そうでしょ?』と、同意を求めるように片目でウインクまでしてみせる。
「狼だったら、目の前にもいるかもな。なにせ、七日分の体液がここに溜まってるんだから」
しかし、治彦も黙ってはいない。
すでにパンパンに膨らんだズボンのフロントを、指の先でつついてみせる。
「でも、体液の使用は禁止だからね。将来のある男女のセックスには、これを着けてもらわないと」
「なんだよ。スキンをはめてするのかよ」
「真由美に赤ちゃんなんて出来たら、治彦はお世話できるの?」
小悪魔っぽく会話を繰り出しながらも、智花は真っ当な正論を述べた。
そのうえで、スカートのポケットから、赤いハートマークがプリントされた小さな正方形の包み紙をチラチラとさせる。
さらには、堅い表情を崩そうとしない真由美の肩をそっと撫でた。
「それで、どこでするのさ?」
「こっちよ」
深夜に近いとはいえ、いつまでも正門前でたむろするわけにはいかない。
治彦が訊いて、今夜の行為の幹事役を買って出た智花が、さっさと校内へと歩いていく。
その後ろを、恋人未満。
ただし近い将来に、恥肉の交わりを果たす予定な真由美と治彦の二人が、少し距離を離しながらついていく。
(いいのか? このままズルズルと引きずられて、俺は……治彦はそれでも構わないのか?)
深夜の校舎内へと、生徒の間では鍵のかかっていないことで有名な、学生食堂の調理場出入り口より侵入する。
高校生らしく制服に身を包んだ三人は、暗い廊下を抜けきり、暗い階段を足を忍ばせて昇りきり、明らかに見覚えのある教室の前へと辿り着く。
「ここって、わたし達の教室……」
「そう、ここが真由美の初体験を迎える部屋よ」
なんとも言えない表情をみせる真由美をよそに、智花は先陣を切って教室の扉を開けた。
ズンズンと静まり返った室内へと足を進ませた。
「お、俺……」
「なによ、治彦。まさか怖気づいたってこと……ないよね?」
「違う……ただ、忘れ物をして」
「忘れ物って……? 治彦は手ぶらだったでしょ?」
「ま、まあ……そんなこといいから。十分だけ……すまん、待っててくれよな」
治彦は踵を返した。
忍ばせて歩んだ行程を、靴音を響かせて駆けていく。
その彼の背中へと聞き取れない少女の声がぶつけられ、慌てて階段へとつながる通路へと身を消した。
(いいんだよな、これで……俺は、絶対に後悔だけはしたくないからな……)
果たして約束の十分は守られたのか?
治彦は息を切らせながら、教室の扉を開けた。
「あら、敵前逃亡したかと思ったけど、ちゃんと帰ってきたんだ。偉いね、治彦」
智花が毒気のある嫌味で出迎えてくれる。
机の幾つかを縦に横につなぎ合わせ、即席のベッドに腰かけた真由美が、引き続きなんとも言えない顔つきでこちらを見つめている。
「はあ、はぁ……智花、制服を脱ぐんだ」
「あたしが……? 真由美じゃなくて……?」
治彦は筒状の細長いモノを、手近な机の上に置いた。
その上で、キョトンとした顔をする智花の元へと近づいた。
「セックスのお手本を、真由美に見せてやるんだ。それから彼女と……」
「でも、そんなことをしたら、せっかくカチカチにさせた治彦のアソコ……またフニャチンになっちゃうでしょ?」
「一週間も禁欲させられたんだぞ。智花のオマ〇コに一発や、二発発射したって、俺の息子は鋼のチ〇ポさ」
腰に手を当て、下腹部をクイクイとさせた。
止まらない先走りに下着は濡らされ、ズボンのフロントに男臭い染みを浮かせたまま、治彦は胸も反らせた。
「ふーん、鋼のアソコなんだ。まあ、それなら構わないけど。治彦もちゃんと脱いでよね」
智花の方は、すでに制服の上着からブラウスと、恥じらいもなく脱ぎ終わっていた。
それを追いかけるように、治彦もまた上半身に羽織らせた差し込まれている衣服を剥ぐように脱がせた。
「えっと……智花……」
「真由美は見ているだけでいいからね。そこの椅子にでも腰かけて、あたしと治彦がしているところを観察だよ」
智花はブラジャーを外した。
窓際の確か彼女の机の上に、脱ぎ終えた衣装を積み重ね、その上に白さの際立つCカップのそれを乗せた。
そして、机に差しこまれている椅子を引き抜くと、真由美に勧めた。