クリスマスローズ 第7話

【第7話】

急激な脱力感が全身を襲い、あえなくイヴリンはテーブルに顔を埋めて眠ってしまった。
テーブルの冷ややかな感触も深い眠りに就いたイヴリンを眠りから呼び覚ますほどの効果は期待できなかった。

「あれれ?イヴリンさんは仕事中なのにオネンネか?困るんだよな~、まだ撮影終わってないのに。」

風田が腰を屈めイヴリンを覗くようにしておどけた表情でつぶやいた。
助手の美樹が微笑みながら風田に語り掛けた。

「うふふ、風田チーフ、うまく行きましたね。」
「本当だね。こんなにうまく行くとはね。ふっふっふ…可愛い寝顔をしているね。ふっふっふ…社長もぞっこん惚れるはずだよ、この美貌じゃ。」
「風田チーフ、そんな悠長なことを言っている場合じゃありませんわ。次の行動に移らなくては。」

美樹は頬を緩ませイヴリンに見とれている風田に催促した。

「うん、そうだな。じゃあ、予定どおり君は撮影のスタッフにうまく説明しておいてくれ。僕は今からイヴリンをクルマに運び込むから。」
「分かりました。では。」

風田はスタジオの裏側にある勝手口のドアを開いた。
まだ6時前だと言うのに、外はすでに夕闇が訪れていた。
風田は裏に停車中のワゴン車にイヴリンを抱きかかえるようにして乗せた。
イヴリンがいくら華奢だとはいっても、眠っている人間をクルマに運び込むのは結構骨が折れる。
イヴリンを後部座席に乗せた後、両手、両足をロープで固定し、さらには厳重に目隠しと猿ぐつわまで施した。

その頃、助手の美樹は撮影スタッフに滑らかな口調で偽りの説明をしていた。

「イヴリンさんは風邪をこじらされたようです。頭痛を訴えておられるので今から風田チーフといっしょにが自宅まで送って参ります。撮影のほうはほぼ終わったのでCM製作には支障がありませんのでどうぞご安心ください。」
「いえいえ、風田さんやあなたに送っていただくのは筋違いというものです。僕たちがお送りしますので。」
「ありがとうございます。でもここは男性ばかりの皆様より私のような女性が1人いたほうが、イヴリンさんも安心されると思います。風邪薬のせいもあってすごく汗をかいておられ、胸元もはだけていますので。」
「え…そうなんですか…」

美樹の言葉に撮影スタッフも返す言葉が見つからなかった。

「分かりました。僕たちも責任がありますのでイヴリンさんを自宅までお送りすべきところですが、そんな事情であればここはお任せいたします。では申し訳ありませんがイヴリンさんをどうぞよろしくお願いします。」
「はい、お任せください。では…。」

美樹は撮影スタッフにそう告げると、すぐにスタジオ内に戻りドアを閉めてしまった。
スタジオ内はすっかり人気が無くなっている。
ステージを照らすスポットライトが対象物の無いまま空しく床を照らしていた。
スタジオに残されていたものはイヴリンのバッグと飲み掛けのドリンクだけであった。

美樹は今年28歳になる。鼻筋の通った美しい顔立ちの女性であったが、どこか冷たさが漂っていた。
美樹はイヴリンの置き去りにしたバッグを持ちスタジオを出ていった。
運転席には既に風田がハンドルを握って待機していた。
美樹が後部座席に乗込むとクルマはすぐに発車した。

クルマは高速道路を猛スピードで駆け抜けて、郊外のにあるとあるラブホテルへと入っていった。
駐車場は部屋と一体型の立体駐車場で、部屋毎に駐車場が付いているため他のカップルと顔を合わせる心配が無かった。
料金も室内の自動精算機に表示された額を帰りに投入すれば良いシステムになっている。

風田たちはイヴリンを抱えたまま7階へと向かった。
彼らが目指した部屋は701号室だったが、意外にも同室の前で立ち止まりドアをノックした。

「入れ。鍵は開いている。」

室内から低い声が響いた。
声の主は何と遠山プロダクションの代表遠山社長であった。

「ご苦労だったな。」

ようやく目的の獲物を手中に収めた歓びからか、眼鏡の奥からキラリと淫靡な光を放ち微笑を浮かべた。
大柄な恰幅のある体型で頭頂部が見事に禿げ上がっているのが彼の特徴だ。
性格は蛇のように陰湿でねちっこく、そのずる賢さは業界でも悪名が轟いていた。

風田と美樹は眠っているイヴリンを室内に運び込みベッドに寝かせた。

「さて、これで一応約束は果たしましたよ、社長。」
「うん、じゃあ…」

遠山はポケットから銀行のロゴの入った封筒を差出し風田に渡した。
封筒はそこそこ厚みがありずっしりとしている。
風田は封筒を受取りにっこりと笑った。

「ありがとうございます。約束の金は確かにいただきましたよ。でも…」
「なんだ?まだ金が不足なのか?」
「いえいえ、イヴリンの運搬代金は今貰いましたけど…。でもね、分かっておられるとは思いますが社長がやったことは誘拐・監禁になるんですよね。まあ俺たちもその片棒を担いだわけですが。しかもこれからの社長の行動次第では強姦罪っておまけが付くかも知れませんねえ。がっはっはっは~!」
「くっ…君は一体何をいいたいんだね?私をゆする気か?あといくら欲しいんだね!?」
「まあまあ、そう早合点するんじゃないっすよ。もっと金をくれなんて誰も言ってませんよ。」
「じゃあ、何が目的なんだ」
「社長って勘が鈍いですね。えへへへ、そこでオネンネしているイヴリンさんですよ。」
「ぬぬっ?な、なんだと!?イヴリンをどうしようと言うのだ!?」

 
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この作品は、愛と官能の美学 Shyrock様から投稿していただきました。
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