クリスマスローズ 第6話

【第6話】

俊介はリビングルームに入ると、テーブルにプレゼントのピアスとブーケを置いた。
ふとテーブルを見ると1枚の写真が写真立てに入れて飾ってあった。
それは今年の夏ふたりで湘南に遊びに行ったときに撮ったものであった。
俊介は写真立てを手にとりじっと見つめた。

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カフェでサンドイッチとアイスティーだけの簡単な昼食をとったイヴリンは、休憩もそこそこにCMの撮影現場へと向っていた。
今は歌手として名を馳せたイヴリンだが、元々は女性雑誌『Dan Dam』の専属モデルだったこともあり、カメラを向けられることには慣れていた。

今回の内容は来年春から発売される新しい飲料のCM撮影であった。
通常CM撮影を行なう場合にはいつも専属のスタイリストが同行していた。
彼女は今年35歳になる女性で、イヴリンの服飾や写真撮影の準備、手配等を担当し、現在のイヴリンにとっては欠かせない存在となっていた。
ところが事務所から「緊急に打合わせしなければならない仕事があるので直ぐに戻ってきて欲しい」という連絡が入ったため、彼女は急遽帰ってしまった。
やむを得ずイヴリンは単身撮影現場に赴いたが、幸い現場にはカメラマン以外に臨時のスタイリストが予め準備していた。

さすがカメラ慣れしたイヴリンだけあってカメラマンの指示にもてきぱきとこなした。
過去数々の撮影を経験していることもあって、CM撮影にもさしたる緊張感は見られなかった。
カメラマンは初めて見る顔で、名前は風田速夫といった。
長髪をポニーテールに束ね、サングラスを掛けていた。
痩せぎすで顎には髭をたくわえ、独特の風貌を醸し出している。
イヴリンは休憩時間中スタッフに尋ねてみた。

「ねえ、あの風田っていうカメラマン、見慣れない顔ね。あなたよく知ってるの?」

カメラマンとは対照的によく太った恰幅のよい男が首を傾げながら答えた。

「いえ、実は僕も初めてなんですよ。何でも社長が当初予定していたカメラマンを強引に引っ込め、あの風田って男を急遽抜擢したって話なんです。何か事情でもあったのでしょうかね?」
「え?社長が…?」

イヴリンの表情が急に険しくなった。
(あの嫌な社長の差し金なんだわ…。これは気をつけなくては…。)

「そうなんだ。ありがとう。さあ、それじゃわたし準備するね。」

風田は寡黙でイヴリンを見つめる瞳には淫靡さが漂い、どことなく陰湿な感のある男であった。
ただアシスタントが自分と同年代の若い女性であったことが、イヴリンにとってはわずかに救いであった。
風田は気難しい男なのか、撮影中はスタッフですら気が散るから部屋を出て行って欲しいと要求した。
スタッフはやむを得ず風田の意向に従った。

イヴリンは手にドリンクを持ち、立ちポーズ、座りポーズといくつかのポーズをこなした。
ところが風田と言う男は細かな動作に至るまで注文が多く、気に食わないとイヴリンの身体に触れて指導を行なった。
セクハラともいえるような彼の動作にイヴリンは強い不快感を感じたが、もしかしたらそれが彼の仕事のスタイルかも知れないし、自分が我慢をすることによって良い写真が撮れるならばそれはそれで仕方がない、とイヴリンは考え堪えることにした。
それにカメラマンとマンツーマンとはいっても、彼のそばには若い女性のアシスタントがいる。それもイヴリンを安心させる要因のひとつであった。
ところが、風田がかなり露骨にイヴリンの胸や尻に触っても、アシスタントは全く無関心を装っていた。

イヴリンにとっては不満な状況といえたが、撮影はそれなりに順調に進行した。
既に相当な枚数を撮ったはずだ。
始まってから1時間ほど過ぎた頃、風田がイヴリンにつぶやいた。

「イヴリンさん、もうちょっとだ。さあ、最後はドリンクをグッと飲むところを撮るから美味しそうな顔をしてね。」
「はい。」

イヴリンはポーズを決めてドリンクを傾けた。
風田はイヴリンの斜め45度の角度から屈んでシャッターを切った。

「う~ん…どうも思うように撮れないな。イヴリンさん、すまないけどもう1本飲んでくれるかな?」
「え?もう1本飲むんですか?お腹が膨れそう…。あ、いえ、分かりました。それじゃあ。」

イヴリンが助手からドリンクを受取った時は、手回しよくドリンクの蓋は開封されていた。
イヴリンは再びドリンクを飲み始めた。
シャッターを切る音がスタジオ内に響く。

「はい、イヴリンさん、おつかれさま。それじゃ一旦休憩にしましょうか。この後、バックの景色を変えてもう一度撮りますので。あと1時間くらいで終わるからね。」
「は~い、おつかれさま~。」

椅子に腰を掛けたイヴリンは突然睡魔に襲われた。
(どうしたんだろう?昨夜、そんなに夜更かしをしていないのに…。)
 つい出そうになる欠伸を手で押さえて我慢した。
(ああ、困った…すごく眠い…)
視界がだんだん狭くなっていく。
イヴリンは堪りかねてテーブルに肘をつきうとうとし始めた。
(ああ、いけない、寝ちゃいけない…仕事中なのに…)
襲い来る睡魔にイヴリンはついに屈してしまった。
(ガクンッ!)

 
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この作品は、愛と官能の美学 Shyrock様から投稿していただきました。
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