【第5話】
イヴリンは俊介の上で腰を激しく上下動させ、ついには絶頂を極めた後、身体を前屈させ俊介に唇を求めた。
(チュッ…)
「イッたみたいだね」
「うん、すごくよかったわ…あ、でも…」
「ん、なに?」
「でもね、体位を変えてもう1回したいの。俊介に正常位で抱きしめられて…もう1回イキたいの…」
「そうなんだ。よし、もう一度イかせてあげよう」
「俊介だってまだイッてないし」
「うん、オレもついでにイこうかな」
俊介はそうつぶやくと、おもむろに体勢を入替えイヴリンの上に乗り、怒張したものをイヴリンの狭い隙間に突き立てた。
イヴリンは身体を開き俊介のものを迎える。
イヴリンの口元から甘い吐息が漏れる。
俊介の腰のピッチが次第に加速していく。
ふたつの肉体が1つに融合していくような、そんな錯覚をイヴリンは覚えた。
先のセックスで既に熟していた実が落ちるのに多くの時間を要しなかった。
「いやぁ~~!俊介~、あっあっあっ!もうダメ!わたしイッちゃう~~!」
シーツを鷲づかみにしていたイヴリンは、さらには俊介の頭に手を宛がい彼の髪を掻きむしった。
「あぁ、オレもうイクかも…ううっ…」
「イッて、イッて、イッてぇ~、ああぁ~ん、わたしもイッちゃう~~~!」
「オレもうガマンできない!イッちゃうよ…ああ…あああ…」
俊介が果てる頃、イヴリンは突然ジェットコースターが急降下するような心持になっていた。
いっしょに極める歓び…それは愛し合うふたりだけが手にすることのできる快楽特急の乗車券といえるだろう。
イヴリンは俊介に抱かれたまま身動きひとつしなかった。
眼を閉じて、今し方通り過ぎて行った悦楽の風にまどろんでいるようだった。
俊介はイヴリンの頬にくちづけをした。
閉じた窓の外ではすでに夜のとばりが降りていた。
止まっていた時間が再び動き出したような気がした。
「イヴリン、明日はクリスマスイヴだね。プレゼントを持って君の家に行ってもいいかな?」
そんな俊介の言葉にイヴリンはにっこり笑って肯いた。
「ありがとう、俊介、すごく嬉しいわ。待ってるわ。」
「でも明日のスケジュールはだいじょうぶ?午前中は仕事でいっしょだけど。」
「そうね。午前中はCD収録のリハーサルだね。昼からはCMの撮影。夜の8時には帰れると思うの。」
「うん、じゃあ、夜行くね。」
イヴリンはニッコリと笑って肯いた。
昨年はクリスマス・ライヴがあったから、ふたりで祝えなかった。
今年は俊介と初めて、クリスマス・イヴを過ごせる。
イヴリンは帰り道まるで少女のように心がときめくのを覚えた。
俊介はイヴリンのマンションに向かう途中、駅前のデパートで買物をした。
まだまだギャラが多いとは言えない俊介だったが、せめてクリスマスぐらいはと、なけなしの金をはたいてプチダイヤのピアスとクリスマスケーキを買った。
(イヴリン、こんなもので喜んでくれるかな…)
ウィンドウを覗く俊介に微かな不安がよぎる。
(いや、金額なんかじゃない、ハートが大事なんだ。心のこもった贈物ならきっと喜んでくれるはずだ。)
デパートの店員は相手の女性の年齢や好みをしきりに尋ねてくる。
俊介はそれには答えず、飾りケースの端っこにあるスウィングタイプのピアスを選んだ。
クリスマスらしい赤と金のラッピングが嫌でもムードを盛り上げる。
(きっと喜んでくれるだろう。)
俊介は店員が手馴れた手つきでラッピングする光景を満足そうに見つめていた。
デパートを出たところに1軒の花屋があった。
(あ、そうだ!イヴリンに似合いそうな花を買っていこう…)
店頭にはすでにセットされたブーケがいくつか並んでいる。
ウィンドウを眺める俊介の目が一瞬止まった。
(あの花はなんて言うんだろう。きれいだなあ、まるでイヴリンみたいだ。)
「あのぉ…あの花は何という名前なの?」
エプロンをした花屋の娘が笑顔で答えた。
頬にこさえたニキビとあどけない仕草が実に初々しい。
「いらっしゃいませ。あれはクリスマス・ローズっていうんです。今の季節にピッタリですよ~。」
「うん、すごく可憐な花だね。」
「根にアルカロイド性物質を持っているところから、中世ヨーロッパでは、万病の薬や悪魔除けとして利用されていたんですよ。」
「へえ~、そうなんだ。縁起がいいんだね。じゃあ、それ貰うよ。」
「ありがとうございます!」
俊介はクリスマス・ローズとプレゼントを抱えてマンションへ急いだ。
時間は約束の午後8時だ。
だけどイヴリンはまだ帰ってなかった。
ドアの外でしばらく帰りを待ってみたが、一向に帰ってくる気配がなかった。
部屋の鍵は彼女から1本預かっていたので、入室することは可能であった。
しかし、いくら預かっているからと言っても、恋人の留守中に黙って入室することは躊躇われた。
そうは言っても他人の目もある。これ以上変な噂で雑誌に載るのも考えものだ。
(ここは入って待つのが最善の方法かも…)
そう考えた俊介は鍵穴に子鍵を挿し込んだ。
(ガチャリ…)
重い金属のドアが開いた。
当然だが部屋の中は真っ暗だ。
壁際にある電気のスイッチを入れた。
部屋は淡いピンク色を基調とした優しい色使いで統一されている。
俊介は靴を脱いで玄関の端に寄せた。
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