紫檀菖蒲 後編(1)

【後編(1)】

(…なんで…!)

なんで、自分じゃなかったのだろう。
なんで、もっと愛してといえないのだろう。
なんで、なんで…なんで。

涙は知らぬうちに零れ、いつの間にか鳴咽に変わる。
愛して欲しいだけだった。
あの人に、お前が1番だよと言ってもらいたかった。
嘘でも、いいから。

「…父様っ…!」
苦しくて堪らない。
彼はマリアを特別に作ったのだ。
己の真の『愛』玩具として。

己の性欲を慰める惨めな玩具とは違う。愛する為の、心を満たす為の愛しき物。
性欲を満たす哀れな道具に過ぎない自分。
愛される為に産まれたマリア。

『アイツにとっては、ただの道具なんすよ。あんたも…あたしも』

(そんなことっ…!)

解っていても、止まらない。


愛してる


愛してる、愛してる


誰よりも彼を愛してる


無条件にあの人を愛するように造られた、哀玩具。


愛してる


哀してる。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「お目覚めのようで」

聞こえた声に、ダリアは顔をあげる。もはや力が入らないのか動きは緩慢だ。
泣き疲れた目は真っ赤にはれ、腫れぼったい瞼は重々しくあがる。

「…あたしを…どうするつもり…?」

かすれた声で、それでもまだ闘志の失せないダリアの声に、妖子は苦笑いした。

「アンタが何もしないで帰ってくれるなら…あたしももう何もしやせん」
「…嫌よ。あたしは…諦めない…」

威嚇するように睨むダリアの姿は、もはや凄惨で。妖子は困ったように首をかしげる。

「強情な人だ…」

妖子が近づいてくる。逃げないと。またあれをされたら、今度こそ堪えられない。

「ひ…ぃ、や…」
「壊れても…しりやせんよ?」

体がうまく動かず、逃げられない。妖子が一歩一歩、近付いてくる。

(もうっ…!)

触れられる。そう思った矢先だった。

「それくらいにしてやってちょうだい」

離れた場所から聞こえた声に、二人は気付いた。
ダリアは振り返り、妖子はゆっくりと顔を起こして見つめる。

何もない壁が滲み、そこに女が現れた。真っ青な髪を高く結い上げ、ギリシア神話の女神のようなドレスを纏った、美しい女。

「い…イリア姉さん…っ」

驚愕するダリアをよそに、イリアと呼ばれた女は妖子を見つめる。

「…久しぶりね。マリア。…いえ、今は妖子さんと呼ぶべきかしら?」
「呼び捨てで結構。お迎えすか? 次から次へと」

その言葉に、イリアは首を左右にふる。

「貴女を呼びにきたわけじゃない。その子を引き取りにきたの」

彼女は歩み寄る、というより床を滑るようにこちらにやってくる。

「迷惑をかけたようね。けど、可愛い妹をみすみす見捨てられないもの。…足手まといを持った状態で貴女とやり合う程、私は愚かではないわ」

呆然としているダリアの腕を、イリアが引き上げて立たせる。

 
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この作品は、ひとみの内緒話管理人、イネの十四郎様から投稿していただきました。 
尚、著作権は、「ひとみの内緒話」及び著者である「M・Y様」に属しております。
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