クリスマスローズ 第2話

【第2話】

イヴリンは好きでもない男性からのおぞましい行為に鳥肌が立つ思いがした。
絡み付いてきた腕を振り解こうと必死にもがいてみせるイヴ。
逃すまいと年齢には似つかわしくない意外な怪力で圧してくる遠山。
遠山の手はイヴリンの黒いレザーパンツのジッパーに掛かった。

「なあ、いいじゃないか、なあ!」
「や、やめてください!社長、嫌です!」

イヴリンの抵抗も空しく、ジッパーが降ろされて、レースの黒いパンティがチラリと覗いた。

「グヒヒヒヒ~、さあさあ、この奥を見せなさい。大人しくして。」
「いやっ、嫌です!やめて~っ!」

(バシンッ!)
(ウワ~~~ッ!)

次の瞬間、遠山の巨体が床に仰向けになって倒れ込んだ。
細い華奢な女性が2倍ほどもある男を突き飛ばしてしまったのだ。

実はイヴリンは学生時代、小林寺拳法を学び段位まで獲得するほどの腕前で持っていた。
武道とは久しく離れていたものの、そこは有段者と言うこともあって無意識のうちに自然に身体が反応したのであった。

遠山がいかに巨体とは言っても、鍛えていない身体であれば所詮はただの独活(うど)の大木。
腰周りが胸囲以上もある無様な体形の男は、動きも鈍く意外と非力なものである。
細腕とは言え、有段者の技にはなす術も無かった。

「いてててて…くそ~…よくも私を…」
「社長が私に手を出そうとしたからです。もう二度とこんなことはやめてください。」
「く、くそ…今までの恩を忘れたのかぁ~…」
「いいえ、今までの恩は決して忘れておりません…では、失礼します。」

床にうずくまる遠山をキッと睨んで、イヴリンは事務所を後にした。

事務所を出てタクシーに乗り込もうとしたイヴリンであったが、思い返して夕暮れの街を歩くことにした。
急に俊介(28才)の顔が見たくなったのだ。

(あ~あ、これでもう私の芸能生活も終りかな~…)

夕方になって一段と寒さがが増していた。
イヴリンは肩をすくめ、速足で俊介のマンションへと向った。
人気女性歌手が彼氏の元に堂々と行く。
一見無謀な行動のように思われたが、イヴリンはすでに開き直っていた。

(だって、あれだけ散々雑誌に叩かれたんだから、もう恐いものなんかないわ。)

イヴリン専属の記者たちも、おそらく他の餌を漁っていることだろう。
サングラスを一度は出してはみたが、再びバッグに仕舞い込んだ。

イヴリンは切れ長の瞳と鼻筋の通った美形で、紅く染めたボブヘアがよく似合っていた。
それに加え、黒の革ジャンと黒のレザーパンツ、それにショートブーツが彼女の定番だ。
道をすれ違う人たちは、彼女のあまりの堂々とした態度に(あれ?あの子、歌手のイヴリンにすごく似てるな~、本物みたいだ~。)等と思ったことだろう。

俊介の5階建てのマンションが間近に見えて来た。築後20年位は経っているだろうか。外壁がどんよりとくすみ、お世辞にも立派なマンションとは言い難い。バックバンドとしての下積みが長い俊介にとっては仕方の無いことであった。

イヴリンと俊介の出会いはやはり音楽からであった。とある公演以来、俊介の所属するバンド‘ノエル・ファイヴ’がイヴリンのバックを務めることになった。公演が終了した後、酒の好きなイヴリンは彼らとともに夜の巷に繰り出すことがしばしばあった。

そのメンバーのひとりが俊介であった。彼は5人の中でも無口で地味な存在であったが、彼の奏でるベースの音色はイヴを陶酔させるほど素晴らしいものであった。どこか陰の漂うニヒルさを持つ男であったが、イヴリンはそんな俊介に次第に惹かれて行った。

「ねえ、俊介。ベースだけを伴奏に歌えるかな?」
「うん、できないことはないよ。」
「じゃあ、後で私のマンションで合わせてみない?」

切っ掛けはそんな些細なことから始まった。
その夜、俊介のベースに合わせて、イヴリンは歌った。酒の勢いもありテンションはどんどんと上がった。挙句にはイヴリンの持ち歌以外もポンポンと飛び出した。

深夜とは言っても、防音ボックス(広さは2㎡ほどで、遮音性、制振性に優れた物置のようなもの。)の中なので、音が外部に漏れる恐れは無く近隣への配慮も万全と言えた。

明け方まで歌い続け疲れ果てた2人は、ボックスの中で折り重なるように熟睡してしまった。

そんな奇妙な夜を過ごした2人が、急接近するのに多くの時間を要しなかった。
2人が結ばれたのも、それから僅か1週間後のことであった。

社長からの理不尽な誘いを断ったイヴリンだったが、俊介にはその事については一切語ろうとしなかった。彼に話したとしても心配を掛けるだけだろうから。
ただ、心がどんよりと重い雲に覆われているようで、無性に彼に甘えたかった。
しかし俊介はいつもと違うイヴリンの態度が気になった。

「どうしたの?イヴリン。何だかいつもの君と違うみたいだよ。」
「え?そう?そうかな~…いつもとちっとも変わんないよ。ちょっと疲れているからかも…」

 
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この作品は、愛と官能の美学 Shyrock様から投稿していただきました。
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