クリスマスローズ 第1話

【プロローグ】


ここ数年日本ポップス界の頂点を極めてきたイヴリン(26才)も、最近は若手歌手やグループの台頭が目立ちはじめ、CDの売上げが伸び悩むなどやや翳りが見え始めていた。そんなさなか起死回生の一発を図るうまい話が持ち掛けられたのだが……

【第1話】

「社長!約束が違うじゃないですか!」

イヴリンは血相を変えて、社長に抗議した。
遠山社長(57才)はイヴリンの抗議に臆すること無く、葉巻に火を点しながら悠然と答えた。

「うん、あの歌番組の司会は確かに君に仕切ってもらおうと思ってたさ。番組を企画し始めた頃はね。」
「じゃあ、どうして…?」
「いやあ、私からは言いにくいことだけど…考えてもごらんよ。昨年は確かに君はベスト10の常連だった。出す曲、出す曲、すべて大ヒットだった。だけど今はどうだ?たまにベスト20に入ればいいところじゃないか。特にKKB84や、KIRA等にことごとく後塵を拝しているではないか?」
「うっ……」

イヴリンは遠山社長の言葉に、返す言葉が見つからなかった。
確かに彼の言うとおり、イヴリンは2008年から2010年に掛けてミリオンセラーのラッシュが続いた。
ところがある日、ある男性との噂を某ゴシップ誌にすっぱ抜かれてしまった。
彼女がある男性が住むマンションに深夜訪問する場面をシャッターされてしまったのだった。
芸能関係の話題が乏しい時期であったため、格好のネタとなり、マスコミはこぞって彼女を追い掛けた。
彼らにとっては、売れに売れている女性歌手の私生活を暴くことは、ドル箱を得たも同然であった。
心無いファンからの嫌がらせの手紙や悪戯も相次ぎ、イヴリンはノイローゼになってしまった。
しばらく休養をしたいと事務所に申し出、事務所側も事情から考えてやむを得ないと判断した。
その頃、芸能界では新勢力が台頭していた。
その筆頭にはBKB84がいた。

イヴリンのCD売上は大幅に下降した。
新曲も暫く出なかった。
マスコミも新しいゴシップに眼を向け始めた頃、イヴリンはようやく立ち直った。

(こんなことしてちゃいけないわ。がんばらなくっちゃ。)

彼女のオリジナルによる新曲が発売されたものの、売上は今ひとつ伸び悩んだ。
また新しい歌番組の企画があり、イヴリンと某有名タレントをMCとして抜擢する予定であった。
ところが騒ぎにより出演は取り止めとなった。
しかしイヴリンは夢を捨て切れなかった。
歌手という立場はタレントとは違って基本的にレギュラー番組と言うものは無いのが普通。
何とか掴み掛けたレギュラーの座を射止めたいと思った。
そして単身、遠山プロダクションの社長のもとへ向ったのであった。

遠山社長の眼鏡の奥がキラリと光った。

57才とは言っても実業家、眼孔は鋭く鷹のような眼をしている。
口元に何か淫靡な笑みを浮かべながらイヴリンに小声で言った。

「君がどうしても出たいというなら条件がある。」
「え?条件って何ですか?」
「ふっふっふ…簡単なことだ。一晩だけでいいんだ。君を好きなようにさせてもらいたい。」
「何ですって!?」

遠山社長はイヴリンの魅惑的なボディを舐めまわすような目つきで眺めた。

(ゴクリ…)

静かな部屋に遠山の唾液を飲み込む不快な音が聞こえた。

イヴリンは鳥肌が立つ思いがしたものの、自分の考えだけはしっかりと語った。

「社長…そんなぁ…そんな無理なことを言わないでください。私が抱かれたいのは愛する人だけです。」

イヴリンの言葉に対し、遠山はすぐに反応した。

「それは奇麗事だ。世の中、奇麗事だけでは通らないのは君も分かっているだろう?私が聞きたいのは、君が今夜、例の番組に出演するために私に賭けるか、賭けないか…それだけだ。ずっと付合ってくれなどとは言わない。一晩だけの契約でいいんだよ。」

イヴリンは遠山の言葉が途切れた頃、意を決したように強い口調で語った。

「社長、そんな契約はお断わりします。番組は諦めます…。」

言葉は穏やかであったが、イヴリンの眼差しは真っ直ぐに遠山を見つめていた。

「なに!?断ると?う~ん…そうか。それは残念だね。君が再起を計るためには良いチャンスだと思うんだけどね。惜しいけど嫌ならば仕方が無いね、他を探すか…。」
「期待に沿えなくてすみません。社長、それじゃ失礼します。」

女王の座を奪回するためには、人気番組の司会兼レギュラーは最大の武器であることも分かっていた。
だからといって、好きでもない男に磨きを掛けた肌を蝕まれることなどとても耐えられなかった。
ここは‘断念’の言葉しかないと判断したのだった。

イヴリンは遠山に軽く一礼し、すぐさまドアの方へ向った。

(ドカドカドカッ!)

その直後、イヴリンの背後に突然魔の手が伸びた。

「きゃ~~~っ!」
「なあ、まあそう硬いことを言わなくてもいいじゃないか。せっかくのチャンスなんだから。悪いようにはしないから、なあ、いいじゃないか~。」

遠山はイヴリンを後から羽交い締めにしながら、耳元に湿った息を吹きかけた。
生暖かく気味悪い吐息がイヴリンのか細い首筋を襲った。

 
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この作品は、愛と官能の美学 Shyrock様から投稿していただきました。
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