【後編(1)】
この季節に、部屋の暖かさだから大丈夫なのだろうが、露出の高いドレス。真っ白な腕や首筋に、黒い髪とドレスのコントラスト。
この空間だけ、色を無くしたのではないかと思いそうになる空気。
「…前上げた薬とは別のをあげやしょう。使い方はお任せしやす」
「…ありがとう」
「見返りは…そうっすねぇ…」
黒い魔女は、怪しげに微笑む。
「…あんたの命だ」
少女は悪魔と契約する。
気付いてもいないのだ、その相手が悪魔以上に恐ろしい相手だということを。
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翌週の、週末だった。
「ねぇナツ。よかったら冬休み、泊まりにこない?」
陽菜に誘われ、魚月は考える。
初めてのことではないし、多分叔父夫婦も許可してくれるだろう。ただ、クリスマスは海斗といたい。という気持ちがある。
「…ナツ?」
「え? あ、ウン…叔父さん達に聞いてみるよ。よかったらメールするね」
「そう。わかったわ」
微笑を浮かべ、陽菜は帰宅の準備をする。
陽菜といるのは楽しい。けど、海斗とも過ごしたい。
(…我が儘なのかな、あたし)
海斗は魚月の気持ちに気付くこともなく、年末の学校行事の忙しさに毎日疲れた表情で帰ってきている。
なのに……海斗が頑張っているのをわかっているのに、ここ最近海斗を見ていると体が疼く。
毎日帰宅したら、声を殺しながらオナニーして海斗を求めている。自分がこんなに浅ましいなんて、思ってもみなかった。
(海ちゃん…)
「ナツ。元気ないけど…大丈夫?」
陽菜の心配そうな声に、魚月は笑顔を繕う。
「平気平気。ちょっと寝不足なだけ」
「そう…ちゃんと休んでね」
魚月は苦笑しながら、その陽菜の心配そうな表情に答えていた。
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「ただいま~」
帰宅すると、鍵が開いていた。誰かいるのだろうかと中に入ると、海斗の靴が玄関にある。
こんな時間に戻るなんて珍しいが、もう冬休みも近い。小学校なんてあっという間に終わるのだろう。
「ただいま」
「あ、お帰り。なぁ魚月。お前今年のクリスマスの予定は?」
「え…?」
まさか二人で過ごしてくれる?
いや、そんなミラクルあるわけがない。けどもしかしたら…。
「特には…どうしたの?」
「いや、実はな? 生徒たちうちに呼んで、クリスマスパーティーしようかと思ってさ」
「…ぇ…」
「実は生徒にせがまれちゃってさ。親父と母さんはなんか、二人で23くらいから旅行行くらしいし…何もないならお前もどうだ?」
海斗はいつも生徒第一。自分の教え子が可愛くて堪らない。自分は違う。従姉妹の、妹止まり…。
「魚月…?」
「…ゴメンッ。その日、姫のうちに泊まり誘われてたんだった! ちょうどよかったじゃんっ」
精一杯の笑顔を浮かべる。心配しなくていいからと。海斗は納得したように笑みを浮かべる。
「そうか。よかった」
「あたし部屋にいるから、何かあったら呼んで。準備くらいなら手伝うからさ」
そういって部屋に駆け上がり、ドアを閉める。
そのドアを背に、魚月は座り込む。
涙が頬を伝い、期待していた自分に悔しさしか募らない。携帯を開き陽菜ヘメールを打つ。
[姫☆大丈夫になったから、イヴの日に行くよっ!二人でクリスマスパーティーしようね♪]
あくまで明るく。いつものメールを打つ。画面に涙がおち、それを拭っても拭ってもまた濡れる。
その日は久々に、自慰をしなかった。
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