チル 流れ星  ペンダントの紋章

【第13話】


あっさりともう一人の手下も首を貫かれ、床にバッタリと伏せた。

オーマンが下半身裸という無様な姿のまま、やっとの思いで剣を取りシャロックに戦いを挑んだ。
だが、たった一度剣は合わせたものの、所詮シャロックの敵ではなかった。
その太い胴体を簡単に突き刺されてしまった。
叫び声が轟き大木のような巨体は床に倒れた。

シャロックは剣を収め、チルのそばに行った。

「チルチル……許してくれ……僕の油断だった。泣きながら走って来た妹から事情を聞き駆けつけたが遅かったか」
「シャロック……恐かった……」

チルはシャロックに抱きしめられて号泣した。
シャロックは裸同然のチルの背中に、自分の上着を脱いで掛けてやった。

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チルは来る日も来る日も泣いていた。

「心の傷は時間を掛けて治そう。必ず癒えるから。ね?」
「もうだめ……私はもうあなたに抱いてもらう資格なんてないわ」
「何を言う、チルチル。いや、チル姫……これは怪我だ。悪い犬に咬まれただけだ」
「え!?私がチル姫であることをどうして……?」
「そのペンダントだよ。そのペンダントの紋章で分かったんだ。でも、君を失いたくないから言い出せなかったんだ。黙っててごめんね」
「そうだったの……」
「でもね、チル姫、もう城に帰らなくては。迎えの兵士たちも来てるよ」
「いや~~~!私は、私は、城には戻りたくない!ここで、ここで暮らすの!シャロックやマリアンヌちゃんたちといっしょに楽しく暮らしたいの~!」
「そりゃあ、僕だって同じさ。でもそれはできないんだよ……」

その時、表から内務大臣が近衛兵と侍女を従えてやってきた。

「チル姫様、お迎えに上がりました。事情はすべてシャロック殿からお聞きしました。お辛かったことでしょう。痛ましや……。されど、今日のことは一切、内密にしたいと思います。ご心配は無用です」

この時、チルはシャロックに何やら耳打ち話をした。

(ねえ、夜のことも……話したの?)
(まさか、そんなこと言うわけないだろう?)

シャロックはチルの顔を見て苦笑いした。
チルも笑った。

身支度を整えて、兵たちとともに城に向かうチル姫の姿があった。
シャロックとマリアンヌは見送ることにした。
マリアンヌは泣いていた。

「シクシク……お姉ちゃん、帰っちゃうの?寂しくなるね。もういっしょに料理は作れないの?」
「そうなの、マリアンヌ。帰らなくてはならないの。料理作り楽しかったわ、とても……」

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チルは目頭を押さえた。
そんなチルの目頭をシャロックはハンカチで拭いてやった。

「チル姫、いやチルチル、しばらくの間だったけどとても楽しかったよ。君のことはいつまでも忘れないよ」
「シャロック……私だってあなたのことは生涯忘れないわ。いつの日か、またいつの日か、会えたらいいね」
「そうだね。でも、それはきっと無理だろう。僕は今、君の姿をこの瞼に焼きつけておくよ。消えないように……」
「シャロック……ありがとう……さようなら……」

チルは細い首から王家の紋章が入ったペンダントを外した。
そしてシャロックのてのひらに乗せた。

「これを、これを私の形見と思って持ってて……」
「うん、大事にするよ……チル……元気でね……」

チルは泣き腫らしもう声が出なくなっていた。
侍女のモニカがチルに駆け寄り、兵士たちや馬車の居並ぶところへ連れて行った。

馬車は動き出した。
車窓から手を振るチル……
その姿がだんだん小さくなって行った。
そして、見えなくなった。

【チル 流れ星  完】

 

 
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