ブルマフェチを自認する少年

 

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第1話
俺はブルマが大好きだ!

(これは心の中の叫びだ。誰にも聞こえやしない。だから堂々と言ってやる。俺は……ブルマが好きだ! 白シャツに濃紺の下着みたいな、ブルマを穿いた女の子が大好きだ!)

胸の中で熱く絶叫して、治彦はあたりを見回した。
隠し持っているフェチな願望をここぞとばかりに腹の底に響かせて、治彦は黒目を走らせた。
右腕を大きく振りかざし、あるいは、口元に手のひらで作った拡声器を当てて、声の限りにエールを送るクラスメイト達を覗きこむようにさせて。

「ファイト、山中さん!」

「がんばって……!」

秋風がそよぐグラウンドにも、燦々とした白く輝く太陽が照りつけていた。
その陽射しの下で、楕円形のコースを駆ける女子生徒の一団が。
それぞれにポジションを競い合い、自然に形作られる隊列の中で、じっとスパートの時を窺うように足をためながら。

1周200メートル。
それに掛ける8周分。
中城高校体育祭恒例、クラス対抗1600メートル走も残り1周に差しかかった時である。

「真由美、今よ! まくりなさい! 差すのよ! 直線一気に追いこむのよ!」

治彦の隣から、気合いのこもった声援が送られる。
心地良いソプラノボイスをかなぐり捨てて、人か、馬か、はたまた自転車か。
オヤジ顔負けの絶叫に近い大声が飛ばされた。
一人、また一人と脱落し、層が薄くなっていく集団で懸命に腕を振る少女へと、熱い眼差しもプラスさせて。

(智花のやつ。自分の分まで山中のことを……)

『ブルマ愛好』という、いかがわしい雑念を胸に抱く治彦にとって、その少女は眩しく感じた。
ライトブルーのハーフパンツ姿を、濃紺の食い込みブルマに置き換えていた己の瞳を、首を振ってリセットさせる。
残り半周、総勢五人に絞られたトップ集団に目を合わせた。

「山中、3位までは固いぞ!」

「真由美、3位でも2位でもダメなの。勝つのよ! あなたなら出来るから」

4コーナーに差しかかり、見守る男子生徒から妥協の声があがる。
それにすかさず、治彦の隣に陣取る少女が否定のエールを送る。

「山中、イケェーッ!」

治彦も声を飛ばした。
腕を振り回した。
直線のデットヒートに体格が一歩優れるライバルが、身体一つ分リードを保っている。
その差をどうにかして詰めようと、顔を歪めて追撃する少女に奇跡を呼び起こす念を。
勝利を確信するライバルの少女には、不幸を呼び起こす念を。
強く意識させた。
地面を蹴り上げるランニングシューズに送った。

「真由美ぃーっ!」

「山中ぁーっ!」

ゴールラインに白いテープが張られている。
声を嗄らした少女が。
レース半ばまであらぬ妄想に取り憑かれていた治彦も。
その他、クラスメイトの誰しも。

喉を震わせ、目を釘付けにさせ。
白シャツに覆われた胸を突き出すようにして、フィニッシュを迎えたのは……

「よくがんばったよな」

「そうよ。2位だったけど、わたし感動しちゃった」

競技を終え、クラスメイト達が待つ席へと戻るその少女こと、山中真由美を、居合わさせた誰もが手を叩いて迎え入れた。
力のすべてを出し切り、どこか呆然とした顔つきのまま呼吸を乱れさせている彼女に、惜しみない賛辞を贈る。

そして真由美を囲む輪の中には、もちろん治彦もいた。
手を叩き、ありきたりな言葉でねぎらいながらも、その目は疲れ切った彼女の顔から徐々に下り……

噴き出す汗に貼りついた白シャツを。
肩を上下させるたびに波打つ、バストのふくらみを。
さらには、豊かに発達中な腰を包むライトブルーのハーフパンツを。
ここが本命とばかりに黒目だけをスライドさせ、股間のところに微かに食いこむ布地のシワを舐めるようになぞらせて。

「治彦ったら、こんな時でもスケベなんだから」

耳元でささやかれた。
爽やかなスプラノボイスを痛々しく嗄れさせた少女が、目尻に光るモノを溜めながら、治彦の脇も肘で突いた。

「いいのか? 声をかけなくて」

「あたしには……そんな資格はないの。それよりも治彦……」

競技に破れても、真由美は輝いていた。
体育祭で行われるプログラムの一つでしかない。
けれども持てる力のすべてを絞りきり、気合と根性まで見せつけた小柄な美少女に、感動を共有し合った人の輪はいつまでも彼女を取り巻いていた。

治彦はそんなクラスメイトに背を向けた。
その彼に寄り添うように、松葉杖をついた少女こと、浅井智花もまた賞賛の輪からこっそりと身を引いた。

「あたしね、治彦が悦ぶモノを持ってきたから」

「えっ? そうなのか!」

「それで、どこに行く?」

「そ、そうだな……特別棟の方とか」

「うん、そうね。あそこなら、誰もいないかも……」

「でも、後一時間ほどでフォークダンスだからな。それまでに戻らないと」

「フォークダンスかぁ……あたしはこの足だから、参加できないし……」

「なら、俺もやめるかな。フォークダンス」

「だめよ、治彦は。ちゃんと真由美の手も握ってエスコートしてあげなくちゃ」

「それ、本気で言っているのか?」

場内の興奮も冷めやらないまま、次の競技が始まるようである。
真新しい歓声が起こり、それから一瞬の静寂の間と、秋の空気を打ち鳴らすピストルの空砲と。

次第に遠ざかるそれらを背中に感じながら、治彦と智花は校舎の影に消えた。

 
  

 
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