チル 流れ星  チル姫十八才

【第1話】


一か月後に婚礼を控えたチル姫は、落着かずそわそわしていた。

チル姫はトゥルース国の長女として生まれ現在十八才であった。
各国との親善パーティーの最中、彼女を見初めた各国の王子や貴族たちからは、「ぜひとも后に迎えたい」との話が持ちきりであった。
それほどに、チル姫は並外れた美貌と才知に溢れた女性であった。
ところがその美貌、才知にもかかわらず、気位の高さはなく、気さくに貴賓の応対もこなせる社交性も持ち合わせていたため、忽ち注目の的となった。 国王は引く手数多のチル姫の嫁ぎ先に頭を痛めた。
やがて政治的な意図もあり近隣の大国パパスの王子に嫁がせることに決めた。
しかし姫としてはパパスの王子の大国を自負する高慢ちきな態度があまり好きになれなかった。
そうは言ってもわがままの言える世ではなく、姫は己の定められた道であると諦めざるを得なかった。

その後、婚礼の準備は両国の間で着々と整って行った。
チル姫は側近の侍女に尋ねた。

「ねぇ、モニカ。結婚式のことは内務大臣から大体聞いているけど、その夜は嫁ぎ先の王子様とどんなことをするのじゃ?」

侍女のモニカは、姫のその唐突な言葉に面食らい返事に窮した。
当然ながら姫はまだ処女であった。
誰一人として、姫に対し、男女の夜の営みの方法など、説くものなどいようはずもなかったから、知らなくても当たり前であった。
モニカは苦心のすえ、姫に曖昧な返事をした。

「チル姫さま、結婚式の夜というのは、素敵な王子さまに優しく愛してもらうためにあるのですよ」
「優しく愛してもらう?どのようにして?」
「いえ、あの…それは私もよく知りませんのですよ。おほほ……」

モニカは言葉を濁した。
チルは言葉を続けた。

「愛してもらうってどんなことをするのだろう…?それよりね、モニカ。私はあの王子様が今ひとつ好きになれないの」

モニカは血相を変えて姫に言った。

「チル姫様、そんなことを言ってはいけませんよ。パパス王子様は、国王様が相応しい方とお決めになられた方です。滅多なことを言うものではありませんよ」

チルはバルコニーの手摺にもたれ、遠くに光る星を眺めていた。

「ねえ、お星さま、『愛される』ってどんなものなの?教えて……」

星は何も答えてくれず、ただその優しい煌きをチル姫に注ぐだけであった。
チルは真っ暗闇の向うの山並を仰いだ。

 
 

 
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