【第6話】
対面座位は吾郎の嗜好に合っている。
乳房と尻がいつでも触れるし、すぐにキスができるのも良い。
それだけではない。他の体位と比べて一度挿し込むと抜けにくいのが長所と言える。
さらには、女性が感極まってくるとしっかりとしがみついてきてくれるのも嬉しい。
吾郎は肉棒に指を添え、ゆっくりと惠の中心部に照準を合わせた。
惠は静かに目を閉じて、結合の瞬間を待っている。
肉棒が花弁に触れた。
「あぁ……」
(ズニュッ……グググ……)
亀裂の中心部に肉棒の五割ほどが挿し込まれた。
更に奥へ押し込もうとする吾郎。
思わず惠の唇から甘い吐息が漏れる。
吾郎は惠の裏腿に手を宛がい力を入れると、一瞬だが惠の身体がふわりと浮遊した。
吾郎は自身の腰の動きに合わせ惠の下半身をたぐり寄せる。
(ヌッチョン、ヌッチョン、ヌッチョン……)
粘着性のある水音がして、静かな部屋に響き渡る。
「いい音だね」
「いやぁん、言わないで…恥ずかしいから……」
惠の吐息の間隔が次第に短くなっていく。
吾郎の動きがさらに加速する。
惠は吾郎の背中に廻していた腕を解き、上体を後ろに反らし両手で自らの体重を支え均衡を保った。
結合部の角度が変わる。
挿入は少し浅くなったが、肉棒がちょうどGスポットに当たって惠を桃源郷へといざなう。
惠はうわごとのように何かつぶやこうとしているが、はっきりと聞き取れない。
やがて吾郎が仰向けに寝転ぶと、惠を馬上の女騎士のように吾郎の真上にまたがる形になった。
女騎士は腰を前後にグラインドさせ天井を仰ぐ。
腰の動きが一段と速さを増して来た。
「ああ、あああっ!ああ、吾郎さん、ああ、やだぁ~、私、いっちゃうかも、あぁん、いっちゃうかも~!」
惠は顔を上気させ、腰を激しく上下動させた。
「お、俺もすごくいいよ、いいよ~!」
「ああっ!ああっ!ああああ~~~!いっちゃう、いっちゃう、いっちゃう~~~!」
「だ、だめだっ!うはぁ~~~!」
惠はスカイダイビングで急降下するような心地になり、吾郎は空に向けてミサイルを発射すような感覚に陥った。
「あ、あああっ、惠ちゃん、君が好きだ!大好きだ~!」
吾郎は無我夢中で叫びながら手を差し伸べたが、腹の上にいるはずの惠の感触がなかった。
吾郎は慌ててベッドから飛び起きたがやはり惠は見当たらなかった。
「えっ?惠ちゃん……惠ちゃんはどこへ行ったの?」
きょろきょろと周辺を見廻したが、やはり惠はいない。
吾郎はふと自分の衣服を見た。
ちゃんとパジャマを着ているではないか。
(まさか、オレは夢を見ていたのか?)
吾郎は大きなため息をつき、がっくりと肩を落とした。
(なんだ、今のは夢だったのか……。それにしても生々しい夢だったなあ。惠と言う名前まではっきりと憶えているし……)
(ピンポ~ン)
ちょうどその時、インターフォンが来客者を知らせた。
(ちぇっ、何だよ、こんな時に全く。どうせセールスか何かじゃないのか……)
吾郎は不機嫌なまま、インターフォンの受話器を取った。
「悪いけど、今、忙しいので……」
吾郎は訪問者を確認もしないまま、無愛想に対応してしまった。
「あのぅ、私、このたび隣に引越しをして来ました者なんですが。ご挨拶におじゃましました」
インターフォンの向うから若い女性の声がした。
吾郎は早合点してしまった自分を恥じながら、先程とはうってかわって丁重に答えた。
「あっ、失礼しました!すぐに開けますのでお待ちください」
玄関のドアを開けた瞬間、吾郎は驚きのあまり絶句してしまった。
「……!!」
それもそのはず、ドアの前に立っていた女性は、夢に出て来た少女『惠』に瓜二つだったのだ。
しかし、目の前の女性は吾郎の驚きもよそに、丁寧に挨拶をしてきた。
「昨日隣に引っ越しをして来た夢野と言います。今後ともどうぞよろしくお願いします。あのぅ、これ、つまらないものですけど、どうぞ……」
女性は挨拶品を吾郎に手渡しお辞儀をした。
「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」
吾郎は女性の顔を穴が開くほど見つめた。
初対面の吾郎があまりに見つめるので、女性は目のやり場に困り果てているようだ。
「それじゃ失礼します」
「あぁ、どうも」
女性は挨拶を済ませると、そそくさと玄関先から去っていった。
吾郎は女性が去った後も、茫然としたままその場に立ち尽くしていた。
(こんなことがあるんだろうか。今の子、夢に出て来た惠ちゃんとそっくりじゃないか。一体どう言うことだ?不思議だなぁ……)
「何をくれたのかな?」
部屋に戻った吾郎は挨拶品の包装紙を見て腰が抜けそうになった。
「な、何だって!?」
吾郎は唖然とした表情で包装紙を見つめている。
それもそのはず、包装紙の上にかかっている熨斗紙(のしがみ)には『夢野 惠』と記されていたのだ。
「あっ、そうだ!」
吾郎は突然思い立ったように、玄関から飛び出していった。
向かった先は商店街のはずれだった。
「あそこに占星術師がいるはずだ!きっといるはずだ!」
吾郎は夢と現実の狭間を急ぎ足でかけていった。
手にはあの石ころ『真実石』を握りしめながら。
【夢少女 完】
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