【後編(7)】
「おはよー」
「あ、おはようミチル」
教室での何気ない風景。
ミチルも薫子も、他のクラスメート達も、いつもの朝を迎えていた。
あの夜から数日が経っている。
そしてミチルはすでに、イジメの対象から外れていた。
否、寧ろクラスからイジメが無くなった、というべきだろうか。
あの夜から、薫子はイジメをやめた。
誰も逆らわないし、寧ろホッとしていた。
だが理由を聞いても、薫子は何となくとしか言わない。
それは当然だった。
薫子もミチルも、あの夢を忘れているのだから。
お互いが夢にでたのは覚えているが、何故か中身を思い出せないのである。
ただとても、大切な夢だった気はするのだが。
けどそれでもいいと思えた。
今隣にいる相手を、親友だと思えるから。
彼女達同様、クラス全員が幸せだった。
だから誰も気付かなかった。
否、忘れてしまっていた。
この教室の窓際にあるはずの机が一つ、無くなっていることに。
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漆黒の扉の向こう。
ベッドに腰掛ける少女の側に、真っ赤な長髪が見える。
いつもは束ねられた髪は解かれ、少女に弄ばれている。
少女は脚を軽く開き、その間に隠れる秘所の間近に、青年の顔がある。
「親友っていい響きですよねぇ…若いっていいなぁ」
少女…黒河妖子は前髪をかき揚げ、楽しげにそう言った。
「狂わせるのは簡単ですからね…妖子様の考えを読めなかった我々は浅はかでした…」
頬を太腿で撫でられる度、床についている脚がビクッと反応している。
空腹時に目の前にご馳走があるのに、食べられない時のような状態なのだろう。
怪は時折舌を差し出そうとするが、髪を撫でる妖子の指に叱られそうで、今一歩踏み出せないようだ。
「ま、いくら催眠暗示で記憶を消したからって、あれだけお灸を饐えておきゃあ、おとなしくなるっしょ。いい女になりますよ? あの子達は」
「…妖子様のお考えなら確かでしょう」
頬を上気させたまま、今にもむしゃぶりつきそうな瞳で、一心にそこを見つめる。
意識が段々と薄れ、無意識に舌が伸びる。
「怪」
「ッ…申し訳…ありません…」
高々10分程度。
この体制でいるのだが、堪えられる程強靭な精神ではないのだ。
「…おねだりもしないで舐めていいと思います?
それに…今日はいいっていうまでダメって…始めに言いましたよね?」
「ぁ…ですがっ…妖子様…もう…ッ」
荒く乱れた息と潤んだ瞳が、限界が近いことをつげてくる。
「…仕方ないなぁ…。ま、今日は多めにみましょ。ほら…ねだって」
妖子の声に、怪は震える唇で思いを告げる。
「私は…淫猥なケダモノです…どうか…この憐れなケダモノに…貴女様の麗しい体に触れることを…お許し下さい…」
「紳士なお前がそうねだるのが、ものすごく可愛い…いいですよ。たっぷり快楽に溺れなさい…あたしの可愛い…獣…」
ベッドに妖子が乗ると、そこに怪が続く。
既に、これから得るだろう快楽しか、見えていない青年の瞳とは少し違う少女の紅の瞳が、部屋の壁の大きな鏡を見つめる。
2メートルはあるだろうそのアンティーク調の鏡に映っているものは、真っ赤に燃える炎のような毛並みの三つの頭を持った獣と、その獣のタテガミを撫でながら妖艶な微笑を浮かべる、長い漆黒の髪の女だった。
【魔性少女・妖子 完】
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