【第1章(2)】
意地悪なご主人様のお言葉です。
私は、喉まで出かかった台詞が、それでもなかなか言えないのです。
死ぬほどの苦痛に身悶えすることになるのか・・
このままモノ足らぬ気持ちで終わるのか・・
どちらも私には、選ぶことができないのです。
いいのよ・・黙っているなら、もう二度と来ないから・・・
まどかは、一人で生きて行きなさい・・・
あぁっ、そんなのイヤです。
私は思い切って、お願いすることにしました。
そうしなければならないのです。
もう私には、ご主人様のいない生活なんて、考えられないのです。
まどかにご主人様のお作りになられた、その新しい・・のを、飾って下さい・・
私の耳に聞こえたのは、掠れて震えながらおねだりする、哀れな奴隷の声でした。
言い終わってご主人様に目を向けると、ご主人様は嬉しそうに微笑まれていたのです。
きっと激痛に咽ぶ私を想像して、楽しんでおられるのでしょう。
私も、胸の奥からこみ上げてくるものがありました。
でも、実際に起こったことは、想像以上のことだったのです。
いいわね・・絶対に声を出さないのよ・・・
みんなが起きてきて、こんな姿を見られたくないでしょ・・・
コクッと頷いた私に、ご主人様は二つの石を左手で持ち上げます。
石から垂れた糸の先端で、洗濯バサミが揺れています。
ゆっくりと近づいたご主人様は、洗濯バサミを一つ取り上げると、指に力を入れてそれを開きました。
指が白くなるほど力を入れておられます。
それ程閉じる力が強力なのです。
私はこみ上げる恐怖に思わず顔を背け、固く目を閉じてしまったのです。
・・ックククゥゥッッッ・・・
想像を絶する激痛が、私の乳首を襲いました。
私は何も考えられず、目を開いても霞んで見える部屋の中が、ゆらゆらと廻っているだけなのです。
感じるのは、確かに存在するのは乳首の痛みだけ・・それ以外に何もない・・・
地獄、まさに地獄の底に突き落とされたと思ったのです。
しかし、これが入口にすぎなかったとは・・・
ククク・・クワアァァァッッッッ・・・
もう一方の乳首からの激痛が、全身を駆けめぐります。
不思議なことに、両方の乳首の痛みを、同時に感じることができないのです。
一方の乳首からの、引き千切られるような痛みが私を苛むと、次の瞬間には反対の乳首が、この世にあるとは思えない痛みを訴えるのです。
痛みは交互に、切れ目なく続き、そしてどんどん酷くなるのです。
とても耐えられない・・・もう、とても我慢できない・・・
許しを願おうと目を開けた時、私の涙に霞む目にぼんやりと映ったご主人様は、ちょうどあの錘の石を、乳首の高さに持ち上げておられて・・それをパッと放されたのです。
気が付いた時、私はベッドに寝かされておりました。
後で聞いたことでは、石が落下した衝撃であの強力な洗濯バサミが、私の胸から弾け飛んだのです。
さすがに大きな悲鳴を上げようとした私に、ご主人様は手で口を塞ぐように飛びつかれたのだそうです。
そのままベッドに倒れ込んだ私は、失神してしまったのです。
ご主人様は、私の縛めを解き、そして乳首に薬を塗って手当をして下さっていました。
ズキズキと疼く乳首に目をやると、薄く血を滲ませた何本もの擦傷ができていました。
そして、いつもの倍ほどにも腫れ上がっていたのです。
ご主人様が、優しく手当をして下さる度に、乳首に触れられる度に、とても耐えられないようなヒリヒリとした痛みが湧き起こるのです。
それでも、私はとても嬉しかったのです。
私はどこまで堕ちて行くのでしょうか・・でも、それが私の幸せなのです・・・
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