【第五話】
手間とは言っても厳重に荷造りされた荷を解くのとは違い、女武者の袴を脱がせることなどたやすいことであった。
まもなくたっつけ袴がありさの下半身から引き摺り下ろされた。
「おおっ!」
「何と!?」
「ふんどしを締めてやがるじゃねえか」
「こりゃ珍しいや」
当時ふんどしは男性専用の下着であり、女性がふんどしを着ける習慣はなかった。当時女性が下着として着けていたものは襦袢や腰巻であった。
ところが今回ありさが袴を穿くことになり腰巻は不釣合いだったため、真っ白な六尺ふんどしを締め込むことになったのだった。
「ほほう~、女だてらにふんどしとはこりゃ驚いたぜ!がははははは~!」
「俺も多くの女を脱がしてきたが、ふんどしを締めた女は初めて見るぜ!こりゃいいや!」
徳太郎がありさの凛々しいふんどし姿に仰天すると、手下たちも徳太郎につられるように囃し立て手を打った。
「ふんどしは武者としての正装だ。お前たちにとやかく言われる筋合いはない」
「ふふっ、どこまで気取ってやがるんだ。ふんどしはチンポがぶらぶらすると落ち着かねえから男がするって決まったもんなんだぜ。それをマンコしか持ってねえお前が締めて何の意味がある?それとも何か?お前もしかしてマンコじゃなくてチンポが着いてるんじゃねえのか?」
「うつけ者。左様なことはあり得ぬ。この美しき乳房を見よ。いずこから見たとておなごではないか」
平吉が蝋燭を持ちありさに近づけた。
男たちはありさのふんどし姿をまじまじと覗き込む。
弥平に至っては、鼻がくっつくぐらいにありさの乳房に接近している。
男たちは一様に野卑な笑みを浮かべ舌なめずりをしている。
我慢ができなくなった弥平がぽつりとつぶやいた。
「お頭、男か女かはっきりさせたいし、いっそこのふんどしをひん剥いて白黒つけやしょうか?」
「いや、ちょっと待て。その前にこの武者に聞いておきたいことがある」
徳太郎は逸る弥平を制して、ありさのあごを摘まんでにやりと笑った。
「ふふふ、まだお前の名前を聞いてなかったな。名前は何という」
「……」
ありさは一瞬徳太郎をキッと睨んで、すぐさま顔を背けてしまった。
「そうか、言いたくないか。まあいいだろう。ではもう一つ聞くが、お前が女だとして、どうしてわざわざ男装をして高野山に来たのだ?理由を言ってみろ」
「……」
「素直に答えれば手荒なことはしない。どうだ話さねえか?」
「ふん、すでに手荒なことしているではないか」
「なんだと?正直にしゃべらねえともっと恥ずかしい目に遭うことになるが、いいんだな?」
「好きにしろ」
「ほう~、なかなか肝が据わってるじゃねえか。だがよ、でっかい口を叩いて後で吠え面かいても知らねえからな」
「ふん」
ありさには彼らから辱めを受けることより、もっと震撼すべき事があった。
それは彼らに密書が見つかってしまうことである。
幸いなことにありさが隠し持っている密書の存在に男たちはまだ気づいていないようだ。
旅立つ前夜、ありさは念のため襦袢の裏地に密書を縫いつけておいたのだ。
命を賭しても父幸村のもとへ密書を届けなければならない。
長年離れて暮らすことを余儀なくされてきたため一度も果たせなかった父への孝行。もしかしたらこれが最初で最後となるかも知れないが、是が非でも果たしたかった。
不幸にも山賊たちに捕らわれてしまったが、たとえどんな屈辱を受けようともじっと耐え忍び、父幸村に秀頼公からの檄文を伝えなければならない、と心に誓ったありさであった。
入山の理由を話そうとしないありさに、徳太郎は目を吊り上げて凄んでみせる。
「どうしてもしゃべらねえつもりだな?」
業を煮やした突然徳太郎はありさが締めている六尺ふんどしの縦褌(たてみつ)に指を掛けた。
六尺ふんどしの縦褌は秘部を隠すために少し幅広に締め込むものである。
縦褌を鷲づかみにした徳太郎はぎゅっと握りしめた。
「よ、よせ!何をする!」
いきなり縦褌を掴まれたありさは狼狽している。
「ぐふふ、お前が男ならば俺の手の中にチンポの感触がなけりゃならねえ」
「確かにその通りじゃ。で、この武者の股間には肉の感触がござったか?」
手下たちは徳太郎の次の言葉に注目している。
徳太郎はぽつりとつぶやいた。
「ない……」
「やっぱり女だったか~、そりゃそうだよな~、このふくよかな胸で男はねえよな~、わはははは~」
「こりゃ今夜はたっぷりと楽しめそうだぜ!」
「それがしのせがれが騒ぎ出したでござるぞ」
「そう焦るな、お前たち。その前にこの女武者の名と男装までして高野山へやって来た目的を白状させなければな」
「……」
縦褌をむんずと掴んだまま、徳太郎はありさに顔を近づけた。
ありさは口をつぐんだままで徳太郎から目を逸らしている。
「ぐふふ、どうしてもしゃべらねえって言うなら、ここに聞いてみるより仕方ねえか」
徳太郎は掴んでいる縦褌をぐいっと引き絞った。
ふんどしは縦褌を絞られると臀部の後縦褌まで引きつってしまい、おのずと麻布が股間に食い込んでしまう。
縦褌はふんどしを着用する時点で初めからよじって締め込んであるので想像以上に堪える。
「ううっ……」
徳太郎ははありさの顔を舐めるように覗き込みながら、縦褌をぐいぐい絞り上げる。
「どうだ?割れ目に食込んで痛いか?」
「うううっ……」
「この程度なら男の場合さほど痛くはないが、女はさぞかし痛いだろうなあ~」
「何のこれしき……」
ありさは眉根に縦皺を寄せて耐えている。
体験談・投稿体験談・夜学問・官能詩