全裸の女の子が男と舌を巻きつかせてキス

 

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第16話
哀しみのファーストキス


8月11日 月曜日 午後9時30分  早野 有里

「そろそろ、ショータイム第二幕を始めましょうかぁ」

副島の芝居じみたハスキー声が部屋中に響き渡り、わたしはソファーの上で仰向けのままマブタをひらいた。

どうしてわたし、ここで寝ているんだろう。
……確か、副島の前で服を脱いで裸になって、肌を見られた気がするけど、その後のことは……よく覚えていない。

「有里様、あなたは偉いですねぇ。まーさか、ご自分でおま○こをさらけ出してくれるとは……副島、感服致しました。そのお礼といってはなんですが、今度は私のストリップショーをお目に掛けたいと思いますので、どうぞご覧のほどを……」

副島の嫌みたーっぷりの言葉も、それに続く衝撃発言も何か上の空……
この人なに言ってるの?って、感じ。

……ストリップ?
それならわたしがしてあげたでしょ。一枚一枚、色っぽく丁寧に……
だから今でも裸なの。

他に誰が? 何か変ね。
あの人……何してるの?

……?
……?……?
……?……?!……!
……て、エーッッッッッッ!!

今、ズボンを脱がなかった? 続けてワイシャツもぉ!?
ちょっと待ってよぉっ……下着まで……!?

副島はわたしの目の前で、見せつけるように服を脱いでいく。

……いや、これ以上見てはいけない。
わたしは手のひらで顔を押えて「ヒーッ、な、なにを……してるのッ!」って、定番通り叫んだ。

どうしてかって……?
早野有里は女の子だから。

あっ、シャツもパンツも脱いでるぅ!

なぜ、分かるのって?
そんなの聞かないでよ。好奇心かな……こうきしん!

「なぜ、顔を隠すのです? さあ、しっかりと私を見なさい」

副島はストリップし終えると、わたしと向きあう形で仁王立ちしている。

「きゃッ、キャアアァァァッ……イヤァァーッ!」

わたしはもう一度悲鳴を上げながら、指の隙間から目に入る光景に驚きと恐怖を感じていた。

初めて見た男の人の身体……
服の上からは想像つかない、厚い胸板と引き締まった腹筋……
そして、見てはいけないと思いながら見てしまった男の下半身……

あれが男の人の……?

わたしのモヤモヤと違って、ふさふさとした黒い茂みの中から赤黒い棒が天を突くように上を向いている。
まるで獲物を狙う蛇の鎌首のよう……

嫌っ、想像していたものと全然違う。
……あれがわたしの中に? そんなの、うそでしょ?!

頭の中が恐ろしい想像を押し付けてきて、下半身を勝手に強張らせてしまう。
せっかく残っていた僅かな希望が、小さな氷のカケラのように溶けていく。

「有里様、何を怯えているのです? 怖がる事なんてありません。さあ、私の息子を見て下さい」

この人、そんなことを言って恥ずかしくないの? 
それとも興奮してるから?
どうしたらいいのよ。

わたしは顔を覆ったまま必死にあとずさって、壁に背中を押し付けていた。
一方の副島は、一歩一歩ゾンビのように間を詰めていく。

「もう逃げられませんよぉ。さあ、挨拶の口づけを……」

なんで突然キスなのよ! さっきと言っていることが違うじゃないっ!

逃れようとするわたしの肩が掴まれ、身体ごと抱き寄せられる。

「ちょっと待って……! まだ、気持ちの整理が……お願い……」

でも、言うことを聞いてくれそうもない。
その証拠に両手は封じられ、男の唇がわたしの目の前に……

これがファーストキス?
もっと夢のような甘い世界だと思っていたのに……

でも現実は、ポニーテールを引っ張られあごを突き出す惨めな姿。
そして唇がわたしの唇を奪った!

ムニュッ! ムニュゥッ! ムニュ、ムニュ……

「むぅぅぅッ、ううぅぅッ……むうぅぅぅぅぅッ!」

声が出せないし息も苦しい。
そして、この人の鼻息がホッペタからオデコに容赦なく降り掛かかってくる。

わたしは抵抗しようと、言葉にならないくぐもった悲鳴をあげ続けた。
でも、これが失敗。

レロッ、れろっ、レロッ……ジュプッ、レロッ……レロッ、れろっ……

副島の舌が前歯の隙間をこじ開けていた。
わたしの舌に絡みつき唾液を流し込んでくる。

気持ち悪い。許してよ……

だけど、叫んでも漏れてくるのは悲しい呻き声だけ……
その間も、わたしの口の中は副島の舌に玩具みたいに扱われた。

前歯から奥歯まで、虫歯の検査のように舌先が叩いたかと思えば、歯茎の内側を右から左、左から右へと好きなように撫でられこすられる。
わたしは歯医者さんが嫌いなの。だから出ていってと、叫びたいけど……副島の舌に声まで押し返される。

これじゃ、まるで未来のわたし……

処女だった舌は犯されて嬲られて……
更に大量の唾液が追加みたいに送り込まれて……
気持ち悪くて吐き出しそうで……
混ざり合ってどちらの唾液か分からないものが、口の中に一杯に溜まっていって……
このままだと唇から溢れていく……

「うぐゥゥゥッ、ぐぐぅぅッ……むぐぅぅぅぅぅッ!……」

今出来ることは辛いけどこれだけ。
わたしは瞳を閉じて喉をかすかに鳴らした。

「ゴクッ」と儚い響きを残して、副島とわたしの体液が口の中から消えていく。

『ファーストキスは、甘酸っぱいレモンの味』

このフレーズを話せない唇で何度も唱えた。
そして、やるせない思いを胸の内でつぶやいた。

(さようなら……有里のファーストキス……)

「うげぇっ、ごほぉっ、ごほっ……うっぐっ、はあ、はぁ……」

口の端から溢れた白いあわ粒の液体が、ダラダラと流れ落ちてくる。
わたしは、男の目を気にしながら、少しでも新鮮な空気を吸い込もうと鼻腔を大きくひらいた。

「私とのキスは有里様の大切な想い出として、いつまでも残して下さいねぇ」

副島は、キャビネットの引き出しから何かを取り出しながら話し掛けてきた。

こう言う人って、本当に空気が読めないのか?
それとも、わざと怒らそうとして言っているのか?

……きみはどっちだと思う?
こんな状況で有里も余裕だねって?

本当にそう見える? 
……だったら、きみを殴っていいかな。
ちょっとは、わたしの気持ちを察してよっ!

 

 

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