美少女が恋人のためにセックスの準備

 

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第2話 寒風に晒されて……セックス! セックス!

きっと千佳は、バカだと思う。ううん、絶対にバカだと確信している。
だって、暗い夜道をリュックサックを背負って歩いているから。
防寒具を厳重に着込んで、変な顔をするお母さんに『友達の家で勉強するから遅くなっても心配しないで』って。
大学の推薦入学も決まっているのに。

「友哉、来てあげたわよ」

アタシは『縁マン公園』って、ジョークみたいに記された石碑に声を掛けた。
正確には、石碑に寄っ掛っている人影に向かって。
そうしたら、その背の高い人影が「よぉっ」って返事して、片手を上げてきた。

「千佳、遅かったな。お陰でこっちは、足の裏が地面にひっついて。よいしょっと」

背が高い人影だった友哉が、大げさなゼスチャーで足を持ち上げてみせる。

「嘘、今着いたばかりって、顔に書いてあるわよ。それよりも、本気でするの? その……セックス。こんな所で裸になったりしたら、絶対に風邪を引いちゃうよ」

「だいじょーぶさ。ちゃんと風邪薬を持って来たし、それに、なにも全部脱がなくたってオマ○コくらい出来るだろ」

「今、どさくさに紛れて変な単語を言ったでしょ。ほーんと、友哉ってスケベなんだから。それよりも、やるなら早くしよ。アタシ、友達んちで勉強するって言って出てきたから」

ツンと澄ましてみせて、でもちょっぴり声帯を震わせて。
そして、自分の女の子に向かって、こっそりとアタシは話し掛けていた。

ごめんね、こんなことになっちゃって。
お外でセックスするなんて、今でも嫌だよ。寒いし誰かに見付かったりしたら大変だし。恥ずかしいし。
でもね、ホントのことを言うと、千佳は友哉のことが気になって仕方がないの。なんだかんだいっても、やっぱり好きなんだと思う。
だから、ほんのほんのちょっぴりだけど、縁マンの伝説にも興味があったりして。
あそこで結ばれたら、永遠のカップルになれるかも……でしょ。

アタシは徒歩10分の登山に備えて背伸びを数回繰り返した。
ずれかかったリュックサックを背負い直すと、石畳の階段に足を掛けた。
頂上まで一直線に繋がっている100段を一気に昇っていく。
麓から押し上げる北風に背中を後押ししてもらいながら。



10分の登山はあっという間だった。
アタシは友哉を先頭に押し立てて、縁マンの頂上を制覇していた。

「ううぅ……さぶい……友哉、やっぱり、本気のホンキィ?」

吹き付ける北風に前歯を鳴らしながら、アタシは訊いた。
そのついでに、風よけになりそうなモノがないか、黒目を右に左に走らせていた。
一面芝生のような草に覆われただけの、直径がたった10メートルほどのガランとした広場の真ん中で。

「見ろよ、千佳。見晴らしいいぜぇ。お前んちも俺んちも、灯りが付いてるってことは、まだみんな起きてるってことだよな。お~い、今からエッチするぞぉ!」

「ば、バカ! 何恥ずかしいことを大声で叫んでんのよ。登山してする『ヤッホー♪』とは違うのよ。よくそんなオツムで、推薦通ったわね」

身体の芯まで凍り付きそうな世界で、友哉の地鳴りのようなおバカ丸出しの絶叫が響き渡る。
アタシはというと、口の中まで凍らせながら嫌みを言ってしゃがみ込んでいた。
だってそうでしょ。満月の明りで変身した狼男の仲間だって思われたくないもの。
クラスで2番目な美少女は人間の女の子だからね。

ビューゥッ、ビューゥッ……!

だけど容赦なく吹き付ける北風は、狼男風の少年と胸キュンな美少女の違いも分かってないらしい。
アタシはジャンパーのチャックを首元まで上げると、乱れる髪を手で押さえた。
しゃがみ込んだままの足元に拡がる冬枯れした芝生を見つめていた。
顔を上げたら鼻水まで凍りそうだから、そのままじっと俯いて、友哉が『撤収』と叫ぶのを期待を込めて待ち続けていた。

「ひゃぉっ! さびぃっ!」

ほら来た♪ 

待ちに待った期待の声を耳にして、アタシは顔をあげた。
『だから言ったじゃない。こんな所でエッチしたりしたら凍え死んじゃうよ』って、話しかけるつもりで、肺にいっぱい冷たい空気を吸い込んで。
喉元まで声が出掛かって凍り付いていた。千佳の全身が……?

「ぬ、脱いでる? 服を脱いでる?? あのおバカ、セーターもズボンもトレーナーも……あ、あぁぁぁ、パ、パンツまで全部っ?! 見えちゃってるよ、アソコ。お、オチ……!」

縁マンの中心で、なぜなのか友哉は踏ん張っていた。
服を全部脱ぎ捨てて、裸のままで、両足をガニ股に拡げたまま北風に立ち向かっている。

「あ、あのですね、友哉。エッチをする時は肝心な処だけ脱いでするって、言ってなかったかな?」

「俺もそう思ったんだけどな。やっぱり青姦は素っ裸でないと様にならないだろ。ふうぅぅっ……ほら、千佳も早く脱げよ。キュッと身体が引き締まって心臓がピリピリ鳴って、大自然に抱かれるって感じだぜ」

「その心臓のピリピリって、死の宣告では……? やだ、アタシは脱ぎたくない! こんな処で裸のまま遭難したくないから」

アタシは後ずさりを始めた。
もう、永遠の愛のなんちゃらなんてどうでもよかった。
だから縁マンの頂上で、ガニ股タイタニックポーズを決めている友哉に、心の中でサヨナラをしていた。
そして、背中を向けようとして……

「お~い、千佳ぁ。セックスまだだぞぉ。してくれなかったら、このままの恰好でお前んち訪問して、お父さん、お母さんに『娘さんを下さい!』って、土下座挨拶するぞぉ。いいのかぁ」

顔面を凍り付かせた友哉に呼び止められていた。

「プロポーズ脅迫なんて卑怯よ。ちょっと嬉しいけど、たぶん全然嬉しくない結果になっちゃうでしょ」

「だったらさ、早くお前も脱げよ」

『そうだよ、千佳。縁マンの頂上で、セックス! セックス! セックス! 交尾! 交尾! 交尾!』

「だ、誰……?」

友哉の声と合唱するように、誰かがアタシに話し掛けてきた。
振り向いても見えない。それ以上は聞こえない。

「友哉の意地悪。わかったわよ。脱げばいいんでしょ。脱げばっ!」

アタシは北風に向かって、やけっぱちで叫んでた。
唾が飛んで、氷になってほっぺたにひっついていた。

真ん丸なお月さまが照らし出す円形のステージの上で、友哉に向かって。
そして、鼓膜に直接語り掛けてきた変な声に向かって……

 
 
 

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