【第8章(2)】
三人は黙ってしまった。しばらくして、その重苦しい沈黙を破るように岸田が話し始めた。
「そう・・だな。まぁ、そうだ。しょうがないな。今回は水着で行くか・・」
藍はそれを聞き、少し安心した。そして吉田の顔を見た。
吉田はまるでうまく行ったね、と言うかのようにいたずらっぽく藍にウインクして見せた。
藍も同じようにウインクを返した。それまでの吉田への蟠りが消えて、親しみすら感じ始めていた。
吉田がその場を取りまとめるかのように言った。
「よし、それじゃ決まりですね。では藍ちゃんの水着姿をメインにしたコンセプトで・・」
岸田はまだ納得していないようだったが、二人の表情にあきらめた様子で、
「じゃ、そうしよう。どんな構成にするか・・」
と話を続けた。
「藍ちゃんの今までの写真集、見せてもらったけど、おとなしすぎるね、あれじゃ。まぁ、水着姿とはいってもこの路線を続けてたんじゃあ、ちょっと・・」
吉田がそう言うと、岸田が急に勢いづいて声を大きくした。
「なっ? そう思うだろ? やはり少しは成長した藍を出していかないとな。いつまでも子供じゃないんだ。」
藍は「子供」という言葉に反応していた。負けず嫌いの藍はいつまでも「子供」扱いされるのは我慢できなかった。
そんな藍の感情を見透かすように、岸田が言った。
「藍はどう思う?」
藍はきっぱりと言った。
「はい。少し大人っぽさを出してみたいと思います。わたし、もう子供じゃありませんから。」
岸田は目を輝かせ、
「よし! じゃあ少しセクシーな路線で行こう。吉田、絵を考えといてくれ。」
「まかせてください。すぐにかかりますよ。」
と吉田も大乗り気だった。
藍の心は揺れ動いていた。ムキになった反動がきていた。
やっぱり恥ずかしかった、水着になどなりたくなかった・・でも、いつまでも子供じゃない、子供じゃいられないんだ。
自分を納得させようと必死だった。
(・・・そう、エッチなことだって・・・少しは知ってるんだから。)
藍の頭をそんな考えがよぎった。そして、少しぼーっとしてきた。
「・・・ちゃん! 藍ちゃん!」
遠くから吉田の声が聞こえていた。
藍は変な気分になり、呼びかけられていることにすぐに気付かなかった。はっとして吉田の方を振り向いた。
「えっ? あっ! ご、ごめんなさい。」
「どうかしたのかな? 気分でも悪いの?」
吉田が藍を気遣い、聞いた。
「あ、だいじょぶです。なんでもありません。ちょっと考え事を・・」
藍は慌てて答えると、吉田が返した。
「あ、こんな話してるから、エッチなことでも考えてたのかなぁ?」
吉田の言うことが図星だっただけに、藍は顔を真っ赤にして、大声で否定した。
「そっ、そんなこと考えてませんっ!」
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