【第1章 (2)】
藍は「・・いきなり呼び捨て、感じ悪い・・」と思ったが「よろしくお願いします」と素直に返答した。
そうしているうちに所長が、仕事について話を切り出した。
「今日は早速CMの打ち合わせとテスト撮影をしてきてもらう。岸田、案内してくれ!」
「わかりました、じゃ、行こうか。」
岸田は藍の腕を掴み、藍は引っ張られるようにして連れて行かれた。出かけ際に所長が言った。
「今日のクライアントは大切なお客様だ。粗相のないように頼むぞ!」
少しおびえたような声で藍は「わかりました。」と返事をした。
藍に不安が再び訪れた。話を持ちかけてきたときの所長と、今の所長ではまるで別人のように思えたからだ。この岸田という男も恐い感じたった。
藍は岸田に、どこへ行くのかもわからぬまま車に乗せられていた。
少し走ったら車はあるビルの前で止まった。岸田が「さぁ、着いたぞ。」と藍に言った。
結構大きなビルだった。
「ここの会社のCMかなぁ?」
藍のイメージは、期待に膨らんでいった。が、それはすぐに打ち崩されることになる。
二人はビルの中に入り、受付に岸田がなにやら話すとすぐに別のフロアに通された。
そこには撮影の機材やセットが用意されていた。
「よく来てくれました。」
そのフロアで二人が待っていると、そういって白髪の男とすこし若めの長髪の男が現れた。
岸田が「どうもどうも、例のコ、連れて来ましたよ。」とへつらうように白髪の男に言った。
「思ったとおりだね。いい子だな。」と白髪の男が藍を舐めるように見ながら言った。
藍は悪い気はしなかったが、少しいやらしさを感じた。ただ「粗相のないように」と所長が言っていたのを思い出し笑顔を作った。
白髪の男が言った。
「藍ちゃんだったね。私がここの広報部長です。彼はカメラマンの吉田氏・・」
紹介をさえぎるように長髪の男が「カメラマンの吉田です。よろしく。」と藍に手を差し出した。
藍も「よろしくお願いします」と手を出すと、吉田は藍の手をぐいと引っ張って引き寄せようとした。
「きゃあ!」
藍は驚き、吉田の手を振り払ってしまった。
「こらこら、おふざけはまだ早いよ。ははは」と白髪の男が吉田をあしらった。
「ごめんね、藍ちゃん。この男はかわいい子を見ると、すぐにふざけてこうするんだ。吉田のせいで私の挨拶が遅れてしまったな。私は多田といいます。よろしく。」
藍は多田の言葉ですこし冷静を取り戻したが、まだ胸がどきどきしていた。
「よ、よろしくお願いします・・」藍は少し引きつった様子で返事をした。
「ではあっちで打ち合わせをしよう。みんな座って・・・」
多田は終始落ち着いた声で会議室のような部屋に皆を集めた。
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アブナイ体験とSMチックな官能小説