援交ブルース 第9話

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【第9話】


それからどれだけの時間が過ぎたのだろう。

散々攻め抜かれて綿のようにぐったりと横たわっている私の身体に、何枚かの万円札が舞って来た。

「ふふっ、たっぷりと楽しませてもらったぜ。約束どおり6枚置いとくぜ。じゃあな、お嬢ちゃんよ」
「へっへっへ、2本同時にぶちこまれてまだ身体が痺れてんのか?じゃあまたな。バイバイ~」

(カチャ……)

嵐は去って行った。
私の心と身体に深い爪痕を残して。
私はしばらくの間何をする気にもなれずベッドでぐったりとしていたが、やっとの思いで立ち上がり風呂場へと向った。
コックを捻り熱いシャワーを浴びた。
汚れてしまった身体を指でごしごしと擦る。
口惜しさでまた涙が溢れてきたが、すぐにシャワーの湯に混じってしまった。
バスタオルで身体を拭いていると、ふと車井山さんの顔が浮かんだ。

髪を乾かして制服を着終えた頃、静かな部屋に突然スマホが振動した。

(誰かな?)

(ブ~ブ~ブ~)

それはみゆきからのラインでたった一行の他愛ないものだった。

「みゆきか……」

その時私にある一つのことが閃いた。

「あ、そうだ」

私はカバンを覗き1枚の名刺を取り出した。
今日、車井山さんからもらったものだ。
名刺には会社名や会社の電話番号が書かれている。

「そうだ、確か裏に……」

名刺の裏面を見ると、手書きで携帯番号が書かれていた。

「車井山さんの携帯番号だ」

車井山さんの声が無性に聞きたくなった。
私は名刺を眺めながら考えた。

(掛けようか……やめとこうか……)

少し迷ったけど、結局逸る心を抑えきれず、ダイヤルアプリをタップして電話機能を起動していた。
呼び出し音が鳴っている。
同時に私の胸も高鳴る。

(出てくれるかなぁ……)

1回…2回…3回…4回……

(無理かなぁ……)

「はい」

(おおっ!出た!)

「あのう……今日のお昼、ヨーグルトシェイクをおごってもらった野々宮ありさです……こんな時間にごめんなさい……」

時計の針は午後10時を指している。

「あぁ、ヨーグルトシェイクの子だね。やぁ、こんばんわ~」
「今日はごちそうさまでした……」
「いや、ごちそうさまと言われるほどのことは」
「あのぅ……」
「どうしたの?」
「はぁ……」
「どうしたんだい?」

私は車井山さんの声を聞くと突然泣けてしまって、ちゃんと喋れなかった。

「どうしたの?何があったの?」
「ぐすん……あのぅ……ちょっとだけでいいので……ぐすん……お話聞いてくれませんか……あのぅ……ぐすん……もし良かったら今から会ってくれませんか……?」
「ええっ、今から?もう10時だよ」
「ぐすん、無理ですか……?無理ならいいんですけど……」
「いや、無理なことは無いけど……ふうむ…………よし分かった。じゃあ今から行くよ。今どこにいるの?」
「え?いえ、あのぅ……私が車井山さんの近くまで行きます」
「いや、もう時間が遅いし、僕が行くから場所を教えて」
「分かりました。それじゃ池袋東口パレコの前で待ってます」
「うん、30分ほどで着くと思うので待ってて」

 ◇ ◇ ◇

約束の時間よりも早めに待ち合わせ場所に着いた。
車井山さんを待ちわびてキョロキョロしていると、遊び人風の男がナンパしてきた。
こんな夜更けに声を掛けてくる男なんてろくなヤツがいない。
いや、それよりこんな夜更けに街頭に佇んでいる女子高生の方がよほど怪しいだろう。

約束の2分前にこちらに向かって1台のセダンが近づいてきた。
車内は見えないが直感的に車井山さんが運転するクルマだと分かった。 
クルマはスカイラインでシルバーなボディが大人っぽさを感じさせる。
クルマが止まると車井山さんが降りてきて、助手席のドアを開けてくれた。
私は車井山さんの横に座ると、何だか本来の自分に戻れたように思えた。
まだ1回しか会っていない人なのに何か不思議な感じ。
でもクルマが走り出してからも、話を切り出すことができなくて口は閉ざしたままだった。

しばらくの間沈黙が続いたがクルマが少し進んだ頃、沈黙を破って車井山さんがそっと尋ねた。

「辛いことがあったんだね……」

車井山さんが放ったその一言が、私の鬱積していた心の堰を切らせたのだった。
私は急に涙が溢れだし止まらなくなってしまった。
車井山さんは私を気遣ってクルマを路肩に止めた。

「ありさちゃん、話してごらん?」

車井山さんが優しく声を掛けてくれたが、私は泣きじゃくるばかりでまともに話ができなかった。
あれほど「援交をやめるべきだ」と忠告してくれたのに、私は車井山さんの言葉も聞かずまたやってしまた。
薄汚い男たちに散々なぶられ、自分というものに嫌気が差してしまった。
前後をダブルで攻められ気が狂いそうだった。
お尻がまだちょっと痛むし。
今日の出来事を全て包み隠さず車井山さんに話すことにした。

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